
国内最大級のライブ配信アプリ「Pococha」の初代“夏の王者”が、ついに決定した。7月21日、北海道の地で行われた『Pococha甲子園 2025』全国大会決勝。総エントリー8,000人超の頂点に立ったのは、お笑い芸人としても活動する人気ライバー、クロヤナギコウジだった。
冬の祭典「POCO LAND 2024」に続く勝利で、夏冬2大イベント連覇という偉業も達成。Pocochaの歴史に、その名を深く刻んだ。
しかし、その輝かしい実績の裏には、長く険しい道のりがあった。「最近芸人の仕事した?」「なんであんなおじさんが」──。借金を抱え、屈辱の言葉を浴び続けた“どん底”から、彼はいかにして、日本一の座へと這い上がることができたのか。
「僕にとっては“復讐”なんですよ」。そう語る彼の原動力、そして“家族より家族”と呼ぶファンとの絆。地獄から頂点へと駆け上がった、芸人ライバーの知られざる物語に迫る。
改めて簡単な経歴やライブ配信活動、その他の活動についてそれぞれ教えてください!
お笑い芸人をしながらライバーをしています。芸歴は今年で21年になります。上京してからは、お笑いをしながら、ずっとアルバイトを掛け持ちして生活していました。でも、コロナの緊急事態宣言のときに、バイトもお笑いの仕事も全部なくなってしまって…。その時点で、手元のお金は0円。借金もありました。
そんな中で出会ったのが、Pocochaでした。
ーー配信歴はどれくらいですか?
配信を始めて、今で6年4ヶ月目になります。現在は、お笑いの活動と配信を並行して続けています。
コンビは解散して、今はピンで活動中です。SNSや動画の投稿をしたり、時々ライブ(劇場)にも“実は隠れて”出演しています。
テレビだと、『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』などにも出演した経験があります。
Q1.Pococha甲子園に向けて、どんな作戦や計画を立てて配信に臨みましたか?
計画や作戦は本当に“ゼロ”だったんですよね。
強いて言うなら甲子園(Pococha甲子園)までイベントにほとんど出ていなかったです。リスナーの皆さんにはPococha甲子園があると発表されてから「甲子園を目指してる」ってずっと伝えていて。
実は年末にあったPOCO LANDの時点から、甲子園に向けて「分母を増やす」ことを意識して、ずっと準備はしていましたね。
Q2.イベントを通じて得た体験、イベント当日の感情や、入賞者発表の瞬間の気持ちを教えてください!
やっぱり今回は、ファミリーの繋がりや絆をすごく感じましたね。
今回のイベントのシステムって、ちょっと特殊で…。
無料アイテムのルールによって、どうしても“人の多さ”が必要とされる仕組みになっていたんです。
だからこそ、いろんな方々が協力してくれたことが本当に大きくて。「これは1人じゃ絶対に無理だったな」って、心から思いました。
ーーイベント当日の感情や、入賞者発表の瞬間の気持ちを教えてください!
実は、会場に向かうまでずっとダラダラしてたんです(笑)。
怖くて、全然着替えられなくて…。「着替えたらもう戦闘モードに入る」ので、その日は、勝つことだけを考えてました。
不安もありましたけど、当日の感情は、本当に戦闘モードで、刀を振り回してる感覚でしたね。
ラストの入賞発表の瞬間は、自分でも不思議だったんですけど、どこか俯瞰で自分を見ていたんです。
「すご…」って。もちろんうれしかったけど、「やったー!」っていう喜びよりも、「すごいこと成し遂げたんだな」って冷静に感じていて。スピーチでも言ったんですけど、まだ勝ち慣れていないからなのか、どうしても一歩引いて見てしまうというか。
自分ではあまり実感が湧いていないんですけど、少し距離を置いて考えると、「あ、すごいことしたな」って思える瞬間がありましたね。
Q3.今後のPocochaでの活動や、ライバーとして次に目指したい目標があれば教えてください。
イベントが終わったから言うわけではなく、ずっと以前から公言していることですが、目標は「コアファン2,000人」です。
“イベントで優勝したい”という気持ち以上に、この目標は一度もブレていません。
正直なところ、これはPocochaでの配信活動だけに全力を注いでも、なかなか届かない領域だと感じています。6年間この世界にいるからこそ、その難しさが分かるんです。
だからこそ、配信以外の活動でも本気で応援してくれる「信者」というと言い過ぎかもしれませんが、そのようなファンを増やしていく必要がある。そうして出会った方々が、いつかPocochaでの応援にも繋がってくれれば嬉しいです。
Q4.いつも配信を応援してくれるリスナーさんやファミリーはどんな存在ですか?
家族より家族っていう感じなんです。そんな風に思えるくらい、僕はファミリーを信用しています。全体重を預けられるというか、それくらいの信頼関係があると思っています。
もちろん、全員が毎回来てくれるわけじゃないですし、正直、今回来られなかったファミリーもいます。
でも、ずっといてくれて、気にかけてくれている人たちの存在って、やっぱりちゃんとわかるんですよ。
コイン数だったり、視聴時間だったり、タグだったり…その全部が見ていたらわかります。
僕の枠は、応援してくれているのが、8割以上おじさんなんです(笑)
“おじさんがおじさんを応援する”という構図で。残りは、女性ライバー1割、女性リスナーも1割ぐらいです。
前に「なんでこんなに応援してくれるんですか…?」って泣いてしまったこともありました。
本当に信用している存在です。
Q5.イベント期間中、一番印象に残っているリスナーさんとのエピソードはありますか?
「応援してくれているリスナーさんって、ずっと枠にいて見守ってくれている」普通だったら、そういうイメージがあると思うんです。でも今回は、“あえて枠にいなかった”というのが印象的でした。
今回のイベントは、ルール的に無料(所持)アイテムの数が重要で、所持数を増やすためにみんなが動いてくれていたんです。
配信枠を回って無料アイテムを集めたり、自分でボイスPocochaを開いたり、Instagramのストーリーで呼びかけてくれたり。
中には、プライベートで飲んでいる席で一緒にいた人にアプリをダウンロードしてもらったり、お店をやっている方が常連さんにお願いしてくれたり――リアルでも、すごく動いてくれていました。
イベント期間中プライベートも含め、すべてが“僕のために力を注いでくれていた”っていうのが伝わってきて、すごく印象に残るイベントでした。
Q6.ライバーを始めたきっかけ、配信を始めた当初のこと、現在のライバーとしての活動について教えてください。
ライバーを始めたきっかけは、”生きるため”です。めちゃくちゃ人生変えていただいたので、配信を始めてよかったです。
ーー配信を始めた当初のことを振り返ってみるといかがですか?
当時はまだ、今みたいにライブ配信が市民権を得ていなかった時代で、僕は芸人だったので、正直なところ、最初は「ライバーなんて…」って、思ってたんですよね。最初に配信を始めたときも、リスナーさんは4人くらい。「S帯を目指そう」なんて気持ちはまったくなくて、「S寄りのE」って、ずっと言っていました(笑)。
生意気に聞こえるかもしれないけど、今とやってること自体はあまり変わってないんです。昔からずっと、“自分のスタイル”でやってきました。
出会った人たちが僕の動画を見て、そこからPocochaで応援してくれるようになったり、Pocochaで出会った方がInstagramで広めてくれたり、動画をきっかけにPocochaに流れてきてくれる人がいたり。人とのつながりをきっかけに広がっていった感じでしたね。
始めてすぐに結果が出たわけじゃなくて、本当に時間がかかりました。
でも、ちょうどコロナで時間ができたこともあって、「別に休む理由もないしな」と思って。そこから半年間、1日も休まずに配信を続けたんです。
最初は、本当にずっとなめられていましたよ。
「売れてない芸人がライブ配信をして、お笑いの仕事、最近いつしたの?」って、リスナーさんから嫌味を言われたり。
あと、いわゆる“かっこいい系”とされてるイケメンライバーくんたちが、「おじさんライバーとイベント被ったところで全然余裕」「なんであんなおじさんがS帯にいるの?」――みたいなことを、冗談半分で言ってきたりもしました。
馬鹿にされてるというか、“いじり”の延長なんですけど、僕はそういうの一生忘れないんで(笑)。
前にも言ったかもしれませんけど、僕にとっては「復讐」なんですよ。
だからこそ、舐められてなんぼ。それが、めちゃくちゃいいガソリンになってると思います。
でも今振り返ると、この経験がなかったら、今の自分にはたどり着けてなかったと思っていて。
もし僕が最初から“めちゃくちゃかっこよくて、S6スタートみたいなライバー”だったら、
たぶん今みたいにおじさんたちが応援してくれてなかったんじゃないかなって思うんですよね。
ーーよく”勝ち慣れていない”とクロヤナギさんの口からお聞きしますが、POCO LAND、Pococha甲子園と2度大きなタイトルを獲得されましたが、心情は変わりないですか?
まだ2回なんでね(笑)。
45歳を過ぎて、天狗になることもないし、浮つくこともないので。常に地に足をつけているつもりです。
正直、Pococha甲子園が終わった後、POCO LANDの意気込みを語ることすら、ちょっと恥ずかしかったんですよね。
なんか、偉そうに聞こえちゃう気がして…。もちろん、イベントが始まれば、いつも通り本気で挑みますけど、「チャンピオン」とか「トップライバー」って呼ばれるのは、まだまだ正直、恥ずかしいんです。
これがもし子役上がりのような経歴だったら、調子に乗って勘違いしてしまうかもしれませんが、僕はもうしないですね。
Q7.今回Pococha甲子園にエントリーしたきっかけ、またエントリーに際して「地元」や「ゆかりのある地域」などは意識されましたか?エントリーした地域への思いがあれば教えてください。
エントリーに関しては、一切、迷いはなかったですね。
POCO LANDの夏バージョンということで、出ない理由がなかったですね。
名古屋出身なので、最初は名古屋での出場も考えましたけど、やっぱり関東で優勝した方がかっこいいじゃないですか。だから、地域へのこだわりはあまり持っていませんでしたね。この予選では、最終日に逆転されて2位に終わってしまって、すごく悔しかったです。
やっぱり、完全勝利を掴みたかったという気持ちが強かったですね。
そして今回やってみて改めて思ったのは、1位でスタートする方が難しいということです。やっぱり、目の前のライバルを追い抜こうとするパワーと、後ろから来るライバルを振り切り続けるパワーとでは、後者の方がより難しいんですよね。
イベラスのラスト15分前くらい、少し差が開いていた時間帯があったんですけど、
その時に「同じ人ばかりが手を動かしている」のが伝わってきた瞬間がありました。
みんなで勝ちたかったので、「もうコインがない」「投げられない」などの事情もあったとは思いますが、手が止まっているのを感じた瞬間は、正直、少し悲しく感じたんです。
その15分前、泣きながら訴えました。 「今だけでいい。7時半になったらどんだけ寝っ転がって休んで指を止めていいから、 でもここだけは全員が一緒に指を動かして勝ちたい。」って。1コインでもいいから全員が前のめりになって、同じ足並みで戦いたかったんです。
花火のギフトを全員で投げるとか、そういう派手なことじゃなくて、みんなが一丸となって勝って、同じ気持ちで喜びを分かち合いたかった。その“足並みを揃えること”の難しさを、今回特に強く感じましたね。
Q8. Pococha甲子園を通して、同じ地域のライバーさんなど、他のライバーさんとの交流はありましたか?またその方たちへのメッセージがあればお願いします。
今回のイベントでは、無料アイテムを所持するルールをきっかけに、新たな交流が生まれた方が本当に多かったですね。
そのおかげで、枠ごとみんなが応援に来てくれることもたくさんありました。
正直、同じ地域やランクで戦っているライバー同士の交流はあまりなかったです。
僕は知らない人とあんまり喋らないんですよね。勝ってから話しかけてきた人は全く信用していないですね(笑)。
ーーイベントが終わって一緒に戦った方へもメッセージはありますか?
感謝してる部分もあります。
リスナーさんがいるからこそPocochaが成り立っていると思っていますし、同時に、ライバーさんがいなければイベント自体が成立しないわけですから、リスペクトしています。
それと特に、シングルマザーさんはすごいなって思いますね。
子育てをしながら、配信もこなしているなんて、僕は独身なので全く想像ができません。
兼業ライバーさんも含めて、さまざまな状況で努力している方が多いので、心から尊敬しています。だから、あまり自分のことを「すごい」とは思っていなくて、ただ単に芸歴が長いことと、長時間配信を続けているだけなんです。
Q9. POCO LAND 2025に向けて、今から意識していることがもしあれば教えてください!
意識していることは、さっき話したことすべてにつながっていますが、この年末までに何かしら別の分野で結果を出して、そこにコアファンの数やナイトの数が反映されて、応援してくれる人が増えた状態で臨めたらいいなと考えています。まだ今の自分の状態は、本来の目標には届いていません。
だから、現状に満足せず、もっと高みを目指す――これはありきたりな言葉かもしれませんが、僕の強い想いです。
〈ライブタイムズ編集部〉