ライバー事務所321が主催する国内最大級のライバーの祭典「LIVER祭り2026」のDAY2が8月23日(日)、新宿住友ビル 三角広場で開催された。開演に先立つオープニングイベントとして行われたのが、スペシャルトークショー「応援が仕事になったその先へ 〜ライバー業界と応援市場のこれから〜」だ。お笑い芸人・実業家の西野亮廣と、SHOWROOM代表取締役社長の前田裕二をゲストに迎え、321ファウンダーのゆうこす(菅本裕子)がMCを務めた。

“応援”がひとつの経済となった時代のその先を、ビジネスの視点で語るという本企画。トークは、ゆうこすが約10年前にSHOWROOMでライブ配信に初めて触れ、ギフティング(視聴者からのいわゆる「投げ銭」)の収益でYouTubeの機材を買っていたという原点の話で幕を開け、ライバーが“職業”として成立した10年、急成長の裏にある“応援疲れ”、吉本興業に学ぶブランド論、「ライバーで武道館」構想へと展開した。トーク終了後には、囲み取材も行われた。

ライバーが「職業」になった10年。YouTubeとは真逆の“深さの勝負”
まず語られたのは、ライバー業界の現在地。前田は、ライブ配信のギフティングで生活が成立するようになったのはコロナ禍以降だとした上で、「この10年でライバーが職業として成立し始めたのは、本当に大きなポイント」と振り返った。SHOWROOMでは3,000日以上連続で配信を続けるライバーの表彰も行ったといい、配信が生活の一部として根付いている実態を紹介した。

その構造をYouTubeとの対比で語ったのも印象的だ。前田いわく、YouTubeは何人に届いたかを競う「幅の世界」である一方、ライブ配信は1人のファンに深く好きになってもらう「深さの勝負」。「深く好きになってくれる人が10人、もしかしたらもっと少なくても生きていける。深さの勝負ができるようになったことで、エンタメで食べられる人の数が増えた」と、市場の本質を解説した。
急成長の裏にある“応援疲れ”。鍵は“息継ぎ”の設計と事務所の役割
一方で、話題は業界の課題にも及んだ。前田は、TikTok LIVEを中心に広がったライバー同士の「バトル」文化について、この3年で急成長し国内だけで数千億円規模の市場があるとの見方を示しつつ、「この市場はすごく伸びている一方で、疲弊も生んでいる」と指摘。日々のランキングで収入が変動し、休めば順位が落ちる環境を挙げ、「ライバーの方々に圧をかけながら成長してきた業界。業界全体に課題感を持っている」と率直に語った。
ゆうこすは事務所側の実践として、マネージャーと相談しながらバトルやイベントの頻度を調整する、メンタルケアに近い運用を行っていることを明かした。西野が、試合数やオフシーズンが設計されているBリーグを例に「応援する側の体力が回復してから行ける。あの“息継ぎ”がいい」と応じると、前田も「短期で熱量を上げて稼ぐのではなく、健全性やガバナンスを効かせて、ライバーが長く楽しくサービスを使えるようにする。“ちゃんとする”ことが1周回って大事になっている業界」と、プラットフォーム側の責任に言及した。

トラブルが報じられる配信者の多くは事務所に所属していないフリーだという話も飛び出し、ファンとの距離が近いライブ配信だからこそ、距離感の設計や過熱の抑制を担う事務所の役割が芸能マネジメント以上に重要になっている、という認識で3人は一致した。
吉本・松本人志に学ぶブランド設計。「ライバーで武道館を埋めたい」
ブランドの話題は、LIVER祭りそのものの設計から始まった。ゆうこすは、本イベントを「応援で勝ち上がったライバーが立てるステージ」として用意していることを紹介。リスナーには「応援してよかった」、ライバーには「立てた」という実感が残る仕掛けだ。これを受けた西野は「ステージの演出、めっちゃ大事ですね。立てたということがめちゃくちゃブランドになる」と反応し、では、そのブランドはどう作るのか、という問いへと話を展開。「今聞きながら思ったんですけど、やっぱり吉本興業はよくできてるなと思った」と自身の古巣を引き合いに出した。大阪・なんばグランド花月では若手でも大師匠と同じステージに立つチャンスがあり、その先にM-1グランプリという年に1度の目標がある——この導線そのものがブランドになっているという分析だ。
さらに西野は、ダウンタウン・松本人志を「プロデューサーとして天才的すぎる」と評した。予算のない若手劇場でも用意できるスケッチブックとサインペンから始まる大喜利が、そのままIPPONグランプリというゴールにつながっている構造を挙げ、「1年目からできて、みんながそこで競って、ゴールの審査員が俺ですよ、という流れが完璧」と語った。前田も「流通する言葉を作るのがすごい」と同調し、目標となる舞台と共通言語の設計が、人を熱狂させるブランドの核心だと整理した。

ゆうこすは321の取り組みとして、売上をイベントに投資し、約3,000人規模の東京ドームシティホールでのアイドルライブや、ライバー雑誌の刊行など「とにかく大きいことをやる」戦略を続けてきたと説明。「ライバーで武道館を埋めたい」と口にすると、前田が「やりましょう」と即答し、西野も乗る場面もあった。個人では押さえられない会場に立つこと自体が、ライバーの社会的なブランドになるという文脈だ。
配信の人気はステージの人気に直結しない。オフライン進出への現実的な処方箋
ライバーのオフライン進出についても踏み込んだ議論があった。前田は、配信でギフトを集める力と、ステージで観客を沸かせる力はまったくの別物であり、その違いを誰もしっかり考えてこられていないと指摘。人気ライバーをいきなり大観衆の前に立たせるのではなく、ディナーショー規模で全国を回れるような中間の仕組みが必要だと提案。そうした場を重ねるうちに、ステージ上でファンの空気をつかむ力や歌の力が少しずつ磨かれていくとし、現状はその経験を積める場自体が足りていないと語った。実例としてゆうこすは、IRIAM発の人気VライバーがVTuberとしても活動し、SNS総フォロワー50万人規模まで伸びたケースを紹介。ニコニコ動画出身の米津玄師が、今もニコニコの文化圏全体から愛されているように、「私はここ出身なんだよ」と発信し続けることで、Vライバー界隈全体から「この人をもっと盛り上げたい」と応援される構造になっていると語った。
トークの締めくくりでは、応援市場の本質について一言ずつ。西野は「まだ作りきれていないところがあるのは、可能性でしかない」とエールを送り、前田は自身の好きな言葉として「夢中」を挙げた。「自分が夢を持つことも夢中だし、誰かの夢の中に入ることも夢中。夢の頂を目指して頑張っている時が人生で一番楽しい。その感覚を味わえるのがこの業界のいいところ」と語り、会場を沸かせた。

囲み取材で語られたライバーへのアドバイス。「応援疲れさせない」「外交力を磨く」
トークショー終了後には、西野・前田の囲み取材が実施された。ライバーへのアドバイスを問われた西野は、トーク中の議論を受けて「応援疲れさせないことが大事。半年や1年で終わるのではなく、5年、10年、20年、30年の職業になってほしい」とコメント。自身も作品やイベントを仕掛ける際は「打ちすぎない」ことを意識しているとし、ファンの応援する体力を「回復させる」設計を、事務所やプラットフォームがルールとして担うべきだと語った。
前田が挙げたキーワードは「外交」だ。「外交力が弱いライバーが多い。自分のルームだけではなく、他のライバーともバンバン絡むべき」と指摘し、ライバー同士がつながることでリスナーが回遊し、コミュニティ全体が広がると説明。「奪い合うのではなく、ライバー業界全体をみんなで盛り上げていく意識を持つのがいいんじゃないか」と呼びかけた。
また西野は、トークで議論されたオフライン進出のヒントとして阿波踊りを挙げた。「連をリードしているおばあちゃんは、そのコミュニティではすごい大スター。はたから見るとスターではないのに、内輪ノリのはずのものが痛々しく見えていない。あそこの演出が見事すぎる」と語り、内輪の熱をそのまま外に出すと第三者には痛く見えてしまうという壁を、どう「演出デザイン力」で乗り越えるかが鍵になるとした。
ゆうこすはトークショーを終えて「ブランドを作るためにこの8年間頑張ってきた。ブランドのあるお2人と絡めたことで、もっとブランドを大きくしていけたら」とコメント。西野は「200人を楽しませる能力と1万人を楽しませる能力は競技が違いすぎる。その間をつなぐステージを作れた人は世界にまだいない。この2人が作ってくれることが本当に楽しみ」と、業界の次の課題に期待を寄せた。

イベント情報
開催名称:LIVER祭り2026 / 開催日程:2026年8月22日(土)〜8月23日(日) / 開催場所:新宿住友ビル 三角広場(東京都新宿区西新宿2-6-1) / 入場料:無料(※一部有料スペースあり) / 主催:株式会社321 / 公式HP:https://liver-matsuri-2026.321.inc/
SPECIAL TALK「応援が仕事になったその先へ 〜ライバー業界と応援市場のこれから〜」
開催日時:8月23日(日)11:00〜11:40 / 登壇:西野亮廣(お笑い芸人・実業家)/前田裕二(SHOWROOM株式会社 代表取締役社長)/ゆうこす・菅本裕子(321ファウンダー/MC)
〈ライブタイムズ編集部〉