
9年、2600日以上、一日も休まない配信──。その圧倒的な継続力で「SHOWROOMの頂点」の座に君臨するアーティスト、Annnnnaの空。
その輝かしい軌跡は、声を失うほどの絶望さえも乗り越え、築き上げられた確固たる信念に支えられている。
トップランカーとして走り続ける彼女は、何を考え、何を未来に見据えるのか。本インタビューでは、その軌跡と思考の真髄に迫る。成長を目指すすべてのライバー必見の、内容だ。
後編はこちら|【ファン必見】「辛い日を楽しみな日に変える」それが私のライブ配信。

Q1.改めて簡単な経歴やライブ配信活動、アーティスト活動についてそれぞれ教えていただきたいです。
私は2016年にライブ配信を始め、今年で9年目を迎えます。
2020年には初めて「SHOWROOMアワード」に招待いただき、優秀賞を受賞しました。
その後、2021年・2023年・2024年には、数多くのトップランカーの中から最優秀トップランカーとして表彰され、昨年まで連続でトップランカーとして活動してきました。現在も年間1位を走り続けています。
これまで(8月末時点で)2600日以上、毎日平均5〜6時間の配信を継続しています。
※イベントの条件のためアカウントを一度変更しており、それを合わせると2800日以上
音楽活動については、元々さまざまな音楽の仕事を経験したのち、2016年からシンガーソングライターとして本格的にソロ活動をスタートしました。
毎年夏には「SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」にてワンマンライブを開催し、今年で9年目を迎えます。
また、表現者として音楽だけにとどまらず、モデルやタレント活動など幅広い挑戦を続けています。
ーー2016年までは主に何をされていたのですか?
週3日、ライブハウスの「箱バン」でボーカリストとして活動していました。
バックには常にバンドがついていて、そこで3年以上休むこともなく歌のお仕事を続けてきました。
Q2. 7/18のワンマンライブはいかがでしたか?
過去一番のパフォーマンスができたと感じています。
会場の動員も昨年より増え、配信で観てくださる方の数も伸びました。お客様は全員SHOWROOMからで、当日は200名以上の方にご来場いただきました(会場キャパは300名ほど)。毎年集客が伸びており、観終わったお客様からは「来年も絶対来ます」「次は友達を連れてきます」といった声も多くいただき、実際に現場を見てファンが増えていっているのを実感しています。
また、プロデュースは楽曲制作から衣装、演出、セットリスト構成まで全て自ら手掛けています。会場はホールなので基本的に何もない状態からのスタートですが、楽器や機材の持ち込みはもちろん、演出面では金テープ、さらには鳩を飛ばすといった仕掛けまで取り入れ、作り込んでいます。
Q3.ライバーを始めたきっかけ、アーティストを始めたきっかけをそれぞれ教えてください
始めたきっかけは、ずっとライブハウスで歌ってきた経験からでした。3年以上、毎週のように歌い続ける中で感じたのは、ライブハウスに来てくれる人にしか自分のパフォーマンスが届かないということ。
つまり「ライブハウスを知っている人」「私を知っている人」「ライブハウスに来る習慣がある人」にしか届けられないんです。
どんなにライブハウスで歌っていても、それ以外の人にどうやって自分のパフォーマンスを届ければいいのか――そこにすごく悩んでいました。
ちょうどその頃、友達がニューヨークからSHOWROOMで配信しているのを知って、「どこからでも配信できるし、時間も関係なく発信できる」と教えてくれました。ニューヨークからでも届けられるってすごい!と思って、自分もやってみようと決めたんです。
「もっと多くの人に自分のパフォーマンスを見てほしい」「自分のライブを届けたい」――その想いが根本にあります。
ーーアーティストを始めたきっかけを教えてください
小さい頃から歌うことが大好きで、歌える場所があればどこへでも行っていました。宗教に入っていたわけではないのですが、教会では誰でも歌えるので、毎週日曜日に通って歌ったりもしていました。そうやって、子どもの頃から自然と「歌える場所」を探していたんです。
そして、初めてプロのアーティストさんがステージで歌う姿を見たとき、好きな歌を通じて多くの人を励まし、勇気づけているんだと感じて、とても感動しました。
そのとき「自分もこんなふうに歌で人を支えられる仕事がしたい」と強く思い、学生を卒業したら歌の道一本で生きていこうと決めました。実際に、今までずっと歌の仕事だけを続けています。
ーー始める前に感じた不安や期待はありましたか?
もともとライブがメインで活動していたので、ネットを使った経験がほとんどなかったんです。SNSも全然やっていなかったし、YouTubeに動画をアップしたこともなくて。だから、本当に最初に飛び込んだネットの世界が「SHOWROOM」でした。
最初は誰がいつどこで全国から見ているかわからないことが怖くて、顔出しできずにマスクをして配信していたんです。でも、オーディションに挑戦するときに「審査員さんの前でマスクをしているわけにはいかない」と思って、そこで初めてマスクを外しました。
SHOWROOMを始めた理由は、有名になりたいからというより、ライブハウスに来られない方や、まだ音楽やライブにあまり興味がない人にも届けたいという思いからでした。私はシンガーソングライターなので、活動の幅を広げるために配信をしています。
どんなにいい作品を作っても、見てもらえなければ存在していないのと同じになってしまう。だからこそ、自分の音楽をちゃんと届ける努力をしないといけないと思って、SHOWROOMでの配信を選びました。
Q4.ライバーの魅力や楽しさ、ライバーを始めて良かったこと、やりがいを教えてください
お客さんの反応が見れるのが、すごく楽しいなと思っています。
例えば「新曲を披露します」とか「新しい衣装をお披露目します」といった時に、その場でみんなが反応してくれるんです。その瞬間がすごく嬉しいし、意見を聞けることで「じゃあ次はこうしてみようかな」と新しいアイディアに繋がります。
実際、リスナーさんとのやり取りの中から生まれた作品もありました。
「ラップを聴いてみたい」とさらっと言われたことをきっかけにラップを取り入れてみたり、今年のタイトル曲『Red letter Day』ではラップに挑戦しました。
こうした「みんなの声」が作品作りに大きく活かされていると思います。
やっぱり配信でリアルタイムにコミュニケーションできるのは、すごく魅力的だなと感じています。
ーーライバー始める前と始めてから比べて、良くなったことはありますか?
始める前は、配信は自分が一方的に伝えるものだと思っていたんですけど、続けていくうちにリスナーさんからも多くのものをもらうようになってきました。今では一緒に作っているような感覚があって、そこが大きく変わったところです。そして「この人たちのために歌いたい」「この人たちに喜んでもらえる活動をしたい」と思える方ができたことも、自分にとって大きな変化だと思います。
以前までは「自分が歌が好きだからやっていた」「自分の歌を聞いてほしいからやっている」という気持ちが中心だったんです。でも今は、目の前にいるリスナーさんに楽しんでもらいたい、喜んでもらいたいという気持ちに変わってきていて、自然と目線も変わったなと感じています。
福岡に初めて行ったときには、お客さんが30人ほど来てくれたんです。
東京だけで活動していたら、そこまで集客できなかったと思います。自分のことを誰も知らない場所でも、ライブ配信をやっていたからこそ「福岡に行きます」と伝えると、一気に30人もの方が集まってくれる。
大阪や名古屋、岐阜、静岡など、いろいろな場所に行く機会があるんですけど、初めて訪れる土地にも、すでに待っていてくれる人がいるんです。それが本当にうれしいことで、ライブ配信をしていなかったら決して得られなかった経験だと思います。今では全国各地で自分を待ってくれる人がいるので、それがすごく嬉しいですね。
Q5.逆にライバーの難しさ、辛い部分はどのあたりにありますか?挫折した経験はありますか?
目立つようになると、批判も増えてくるんですよね。勝ち続けることは本当に難しいと感じます。自分としては、活動を前に進めるために頑張っているつもりでも、そのことが批判につながってしまうこともあるのかなと思います。
私は「1位を取りたい」という気持ちよりも、「活動をもっと広げたい」という思いでやっているんです。そこに共感して、応援してくれる人たちの熱量がすごくて。私のワンマンライブを見てくれて「このクオリティをフリーで? 事務所に所属せずに一人でやってるの?」と感動して、応援してくれる方もいました。実際の活動を見て、そこに対して応援してくれる人が多いんです。
だから、ライブ配信で「勝たせたい」というよりも、投げ銭を通じて活動そのものを支援してくれる人たちが多いという印象ですね。
ーー挫折した経験はありますか?
歌いすぎて声が出なくなってしまい、酷使しすぎた結果「発声障害」になってしまったんです。今もリハビリを続けながら活動しています。最初は、朝起きたらまったく声が出なくて。歌声はもちろん、喋り声すら出なくなってしまいました。そこから発声障害と診断され、歌おうとしても声が出ない状態になりました。
それでも、声が出づらく歌いにくい中で、筆談配信をしたり、ライブも休まず続けてきました。正直、「もう上手に歌えないのなら活動する意味はないのではないか」「人前で歌う意味はないのではないか」と思ったこともあります。
けれど、配信を応援してくれている人たちやライブハウスに足を運んでくれる人たちが、それでも私の歌を楽しみにしてくれていました。また、同じように病気や障害に悩んでいる方から「活動を続けてくれて勇気をもらった」と声をかけてもらえることもありました。
そうした声をいただくうちに、「自分の活動を続けることで励まされる人がいる」「歌い続けることで誰かの力になれる」と感じるようになったんです。だからこそ、今は自分の精一杯の歌を届けることを大切にしながら活動を続けています。
自分が一番大事にしてきた「歌」が歌えなくなってしまったときも、「歌しかない」と思ってずっとやってきたんです。だからといって「じゃあやめるのか」と考えたら、結局やめなかったんですよね。それしかないから、やるしかないと思いました。
配信や歌に関して、モチベーションが下がることはありません。自分がやりたくてやっていることで、誰かに言われてやっているわけではないからです。プライベートで悲しいことがあって、直前まで泣いていても、配信を始めたら元気に配信するし、笑顔で配信します。
体調が悪いときももちろんありますが、それでも配信をしてリスナーさんと話していると、不思議と元気になってくるんです。
Q6.飛躍したきっかけやターニングポイントはありましたか?
本当に時間がかかっています。スムーズにいく人は1年でトップランカーになれたりしますが、私はもう9年目です。めちゃくちゃ時間をかけてルームを作り上げてきました。どこかで一気にブレイクしたというよりは、本当に少しずつ少しずつ積み重ねて増えてきた、という感じですね。
SHOWROOMのイベントは、大きいイベントに積極的に参加するようにしています。
その時に勝てなくても、視聴者が多い分リスナーさんに見てもらえる機会が増えるんです。他のルームから偵察に来る人もいて、その時は他のルームを応援していても、翌週から私のところに応援に来てくれることもあります。
「イベントで戦っている姿を見ました。頑張っているから応援します」と言ってくれる人も多かったです。だからこそ、いろんなイベントに積極的に参加して、たとえ勝てなくても「見てもらうこと」が大事なんだと思います。
Q7.これまでにどんな挑戦や努力を積み重ね、SHOWROOMでトップクラスの成績を納め続けるライバーになれたのでしょうか?これまでの道のりやエピソードについても、お聞かせください。
本当に小さなことや当たり前のことをしっかりやるのが大事だと思っています。
例えば配信時間は必ず同じ時間に、毎日配信するようにしています。もちろん「今日は休みたいな」とか「友達と遊びたいな」と思う日もあるんですけど、そこも全部SHOWROOMを優先にしてきました。
配信時間を決めるのは、リスナーさんに思い出してもらいたいからなんです。生活の一部に組み込んでもらえるように、同じ時間に配信を続けていれば、「この時間になったらルームを見に行かなきゃ」と習慣化してもらえる。だから必ず継続して続けることを大切にしています。
さらに、長時間配信もよくしています。「SHOWROOMを開いたら、あんなはいつもいるよね」と思ってもらえる状況を作りたいんです。たとえば、自分のお気に入りのご飯屋さんに行きたくて、やっと休みの日に行けたと思ったのに、そのお店が休みだったらすごくがっかりしますよね。だからこそ、自分は「いつでも開いている」状態を作りたい。リスナーさんが「会いたい」「見たい」と思ったときに、必ずそこにいられるように、私はそのことをすごく大事にして活動してきました。
配信を始めた頃は、今みたいに「マニュアル」や「ライブ配信のコツ」みたいなものが出回っていなかったので、自分で研究するしかありませんでした。そのため、自分の配信は必ず録画して、今でも終わったあとに全部見返しています。
最後まで楽しんで見られればOKですが、見られない部分があるなら「面白くない」ということ。自分のコメントの返し方をチェックして、「このリスナーさんのコメントはもっと早く拾って、こう返した方が面白かったな」と反省会を毎晩やっていました。
客観的に見て「自分の配信が面白いかどうか」を確認し、どうすればもっと面白くなるかを考える。そして「これ、受けたな」と感じたものは、なぜ受けたのかを分析して、もう一度やってみる。そこでまた盛り上がれば「やっぱりこれは効果がある」と確信できる。そうやって研究を続けてきました。
あとは企画ですね。他の人がやっていないことを意識してきました。配信を開いたときに「パッと目につくもの」をやりたいんです。例えば被り物をして配信したとき、当時はあまりそういう人がいなかったので、思わず突っ込みたくなる。好きとか嫌いとか関係なく「えっ」とコメントしてしまう。そんなふうに、入って30秒で「突っ込みたい」「コメントしたい」と思わせる“絵”を作れるように工夫しています。
「コメントください」と言ってもコメントは来ません。だからこそ「思わずしてしまった」「ついアクションを起こしてしまった」と思ってもらえる仕掛けを、どんどん取り入れるようにしているんです。
Q8.”ライバー×アーティスト”として活躍し続けるために大事にしていることや努力していることはありますか?
配信で「勝つ」のと、アーティストとして「好きになってもらう」のは違うと思っています。配信で勝つことを考えると、水商売寄りのアプローチをした方がいいのかもしれませんし、リスナーさんへの接し方も色々あると思います。
でも私はアーティストとして、作品を好きになってもらったり、ライブの楽しさを知ってもらったりすることをブレずに伝えることを大事にしています。
自分が日々どういうことをやっているか、音楽にどう向き合っているか、この作品をどういう気持ちで作ったのか。そういった音楽への情熱や実際の行動をリスナーさんに伝え、それに共感してくれる人に来てもらうことが大事です。
配信を応援してもらうのと、会場に来てもらうのは別物で、配信で人気があってもライブに人が来ない配信者さんもいます。
だからこそ、伝えたいことはブレずに伝えることが、集客にもつながっているのかなと思います。さらに、どちらかが忙しいからといって、どちらかをないがしろにすることは絶対にしていません。
「今日ライブだから配信できない、ごめん」ということもありません。ライブがあっても配信するし、配信していてもライブも行う。両方大変だねと言われますが、両立するというより、うまく相乗効果が出るようにやっています。
Q9.ライブ配信活動・アーティスト活動それぞれの目標や夢を教えてください。
ライブ配信では、皆さんに応援していただき、何度も最優秀賞をいただくこともあり、SHOWROOMの代表のような立場で活動させてもらうことも増えています。
自分の背中を見てくれている子や、これから頑張りたいと思っている人もたくさんいると思うので、ちゃんとお手本になれる存在でありたいですね。
目指せる場所を示す存在になりたいというか、「ここに行けばこういうことができるんだ」ということを見せてあげたいんです。自分の前には、まだ始めたばかりの人たちのためのお手本となる先輩がいませんでした。だからこそ、ライブ配信からここまで行けるんだということを、みんなの夢や希望につなげられる存在になりたいと思っています。
SHOWROOMは、私が事務所にも入っていない、後ろ盾もない状態から、たった1人でリスナーさんと出会い、アーティストとして大きく育ててもらえた場所です。その経験があるからこそ、SHOWROOMをもっと盛り上げたいし、ライブ配信業界全体も盛り上げたいと思っています。
また、ライブ配信業界全体の価値を高めることにも取り組みたいです。
YouTuberといえばヒカキンさんの名前が出ますが、「SHOWROOM」と言っても、まだ誰も知らないのが現状です。そこをもっと知ってもらい、価値を上げていきたいと思っています。来年でアーティスト活動10周年を迎えるので、ワンマンライブでは、皆さんに心から楽しんでもらえるように全力で頑張りたいです。
Q10.ライバーがアーティスト活動をするメリット、アーティストがライブ配信活動をするメリットはどのような点にあると思いますか?
ライバーでなかった場合は、実力がなければ評価されにくいと思います。でもライバーなら、最初の段階から応援してもらえるんです。成長を楽しんでくれるリスナーさんがいるので、すでに完成されたものを求める人たちと、成長を見守り応援したいという人たちがいると思います。ライブ配信アプリを見ている方々は、そうやって駆け出しの人の成長を一緒に過ごしたいという方が多いように感じます。だから、駆け出しのライバーにはとても向いていると思います。
また、アーティストがライブ配信をするメリットとしては、有名な方がTikTokを始めたりすることで、少し遠かった存在が身近に感じられるようになり、コアファンが増えることもあると思います。
Q11.SHOWROOMについて教えてください。(魅力や、好きなところなど)
他のアプリもいろいろ見てきましたが、SHOWROOMにはアバターがあるんですよね。
リスナーさんが自分で好きなアバターに着替えられるし、種類もすごく多いので、リスナーさんも個性を出せます。リスナーさんが自分の人格を持って応援できるというか、ポイントだけでなく性格的な部分も見せられるのが魅力だと思います。ギフトやコメント以外にも、アバターで意思を表現することもできます。
また、リスナーさん同士の横のつながりも多く、仲が良いですし、誹謗中傷コメントも少ないです。温かいコメントが多いので、配信アプリ初心者の方でも安心して始められると思います。
音楽イベントの特典も充実していて、それで獲得したものが次の仕事につながることも多いです。イベントが充実しているところが本当に好きです。プロとしてがっつりやっていきたい人には、チャンスのある環境だと思います。
後編はこちら|【ファン必見】「辛い日を楽しみな日に変える」それが私のライブ配信。
〈ライブタイムズ編集部〉