
一度はメジャーデビューを経験しながらも、夢を諦め、歌うことをやめた。そんな彼女が、再びマイクを握るきっかけとなったのが、「ライブ配信」という世界だった──。
TikTok LIVEで活躍する人気“歌ライバー”「ぶたまん」に、独占インタビューを実施。本記事は、前後編にわたるロングインタビューの前編だ。
「また歌いたい」。配信が蘇らせた、諦めかけた夢。そして、マネージャーと二人三脚で歩む、歌ライバーのトップへの道。
彼女が目指すのは、業界初の「ライバー発・メジャーアーティスト」として、夢の舞台“武道館”に立つこと。その新たな挑戦の物語に迫る。
Q. まず初めに、改めて簡単な経歴やライブ配信活動、アーティスト活動についてそれぞれ教えていただきたいです。
TikTokライブを始めて、今年の10月で2年になります。その前は、2020年の5月から17LIVEでライブ配信を始めていまして、音楽クリエイターとして歌配信を主に続けてきました。配信歴は6年目になります。
ーーアーティストとしての経歴を伺えますか?
13年ほど前に、別の名前で2年間アーティスト活動をしていたのですが、色々うまくいかなくて完全に諦めてしまいました。それからは歌とは本当に離れた仕事——事務や受付の仕事をして、歌はカラオケで友達と歌う程度になっていました。
ずっと普通の仕事をしていたのですが、コロナ禍で派遣のシフトが削られてしまった時に、当時の友人が先にライブ配信を始めていて、「歌ってる人もいるよ」と勧めてくれたんです。「歌が歌えるならやってみようかな」と、最初は本当に軽い気持ちでした。17LIVEをインストールした時も、ライブ配信を一度も見たことがなかったので、リスナー活動もせずに配信をスタートしました。
〈”ライバー×アーティスト”について〉
Q1.ライバーを始めたきっかけ、アーティストを始めたきっかけをそれぞれ教えてください!
ライバーを始めたきっかけは、コロナ禍で仕事のシフトが削られてしまい、家でできることはないかと探していた時に、友人に勧められたことです。
ーー仕事感覚で始められたんですか?
いえ、最初は全く。時間が空いているし、配信で歌えて、しかもお金までいただけるんだ、くらいの感覚でした。ライバーとしてどうなりたい、というのは何もなかったです。
ーーアーティスト活動を始めたきっかけは?
もともと歌が大好きで、過去にはオーディションでグランプリをいただき、メジャーデビューという形で、東京ガールズコレクションのオープニングアクトなどに出演させていただいた経験があります。ただ、当時は同じようなテイストのアーティストが多く、シーンのトップには西野カナさんがいて、その中で埋もれてしまい、うまくいかずに辞めてしまいました。
ーー配信を始める前に感じた不安や期待はありますか?
期待はほとんどなく、不安はありましたね。ただの一般人が配信ボタンを押すわけですから、「人が来てくれるのかな」と。リスナー様が一人もいなかったら、コメントがなかったらどうしよう、という不安はありました。
ーーその不安はすぐに解決しましたか?
そうですね。最初は、配信を勧めてくれた友人が、ご自身のリスナーさんに「リア友が配信を始めるから」と声をかけてくれて。そこからは、歌配信をしていたこともあって、ファンの方がついてくださるのは早かったと思います。
Q2.ライバーの魅力や楽しさ、ライバーを始めて良かったこと、やりがいを教えてください
一番の魅力は、本当に年齢、性別、経歴に関係なく、誰でも輝けるチャンスがあるところだと思っています。私自身も決して若くないですし、特別な経歴があるわけでも、歌がずば抜けて上手いわけでも、ずば抜けて可愛いわけでもありません。そんな中で、リスナー様の応援や、私の歌を聴いてくださるファンの皆様のおかげで輝かせてもらっている。そこは本当にライブ配信のすごいところです。
楽しさで言うと、画面越しではありますが、幅広い年齢や性別の方々とコミュニケーションが取れることですね。私は人見知りなので、リアルよりもむしろ画面越しのほうが自分らしくいられて、楽しいと感じます。一つのことを長く続けられたことがなかった私が、初めてちゃんと続けられているのが、このライブ配信なんです。楽しくなかったら、できていなかったと思います。
ーー初めてよかったことは?
「また歌いたいな」「歌を届けたいな」と思えたことです。その気持ちが、もう一度芽生えました。
配信を始めた当初は、歌える場所があって、聴いてくれる人がいて、応援してくれる人がいる、本当にそれだけでした。でも、初めて音楽イベントに出た時に、どんどん欲が出てきたんです。「また歌を本気でやりたい」「ぶたまんとして、歌の活動をしたい」と。配信を始めて2年目くらいから、そういう気持ちが出てきたことが、本当に良かったなと思っています。
ーーやりがいは?
ライブ配信には正解がないじゃないですか。今もマネージャーと二人で、毎日悩んで悩んで…でも、正解がないからこそ、そこもやりがいなのかなと感じています。
Q3.逆にライバーの難しさ、辛い部分はどのあたりにありますか?挫折した経験はありますか?
音楽クリエイターとしてトップに行きたいのですが、TikTokというプラットフォームは、どうしてもバトルや雑談ライバーさんの方が強い傾向にあって。音楽ライバー自体に、まだあまり注目が集まっていないと感じます。音楽イベント単体だと、そもそもイベントの存在を知らないライバーさんやリスナーさんも多い。その中で、音楽ライバーとしてトップに行くためにどうすればいいのか、毎日悩んでいますね。
――挫折した経験はありますか?
挫折はないですが、大きなイベントの後など、精神的にどっと疲れてしまって、1週間から10日ほどお休みしてしまうことはあります。
――休むことで回復するのですか?
そうですね。それもTikTokに来てからです。17LIVEの時は、悩んだり、苦しい、しんどいと思ったことは正直一度もなくて。今思うと、すごく恵まれた環境にいたなと思います。TikTokはライバーの数も違いますし、本当に難しい。
でも、私にとって「ライブ配信をやめる」ことは、「歌うことをやめる」ことと同じなんです。ライブ配信がきっかけで、もう一度歌うことを夢にできたので、何事もライブ配信が私のベース。だから、「ライバーとしてメジャーに行きたい」んです。
そして、「ライブ配信はすごいんだよ」ということを、自分がトップに立って世の中に発信していきたい。配信をやめたら、その夢を叶えることも、追いかけることもできなくなってしまう。その想いで、なんとか持ちこたえています。
Q4.飛躍したきっかけやターニングポイントはありましたか?
17LIVEの時に出させていただいた、倖田來未さんとのコラボイベントです。そこから、自分のモチベーションも、配信への向き合い方も、全てが変わったと思います。
――イベントのクオリティやプライズが大きく影響した?
それまで音楽イベントには出ていなくて、「これだ!」と思うものでなければ絶対に参加したくない、と決めていました。自分が本気でなければ、リスナー様も同じ熱量で応援できないじゃないですか。だから、それまではランダムイベントに出るくらいで、オフラインイベントにも興味がありませんでした。
でも、2021年2月に倖田來未さんのイベントの予告が出た時、「これだ!これしかない!」と。元々、倖田來未さんが大好きで、配信でもよく歌わせていただいていて、リスナー様からも「倖田來未の歌といえば、ぶたまんちゃんだよね」と言っていただくことが多かったんです。だから、イベントが発表された時は、私だけでなく、リスナーのみんなも「ついに来たね!」と、スイッチが入りました。
Q5.これまでにどんな挑戦や努力を積み重ね、17LIVEやTikTokLIVEにおいてトップクラスの成績を納め続けるライバーになれたのでしょうか?これまでの道のりやエピソードについても、お聞かせください。
正直、17LIVEではトップライバーという位置にいさせていただいたと感じています。でも、TikTokに移る時、その経歴や成績が何も通用しないことは最初から分かっていました。だから、リスナー様に「ついてきて」とは言わず、「TikTokに行くね」とだけ伝えて。本当にゼロから始める気持ちで来ました。
2023年10月に移籍して、そのわずか2ヶ月後のオールスターズで、運営さんにも「無理だ」と言われた中で、音楽部門2位という表彰をいただきました。約3日間の投票で順位が決まるのですが、2位で名前を呼ばれた時は、本当に嬉しかったです。
でも、表彰された次の日からは、また何でもない一日に戻る。だから、もっと「ぶたまん」を知ってもらうために、17LIVEの時には一切やらなかった、苦手なコラボ配信を始めたり、音楽イベントだけでなく、ギフト部門のイベントに初めて参戦したり。そうやって、コツコツと名前と成績を積み重ねてきました。
そして、17LIVEの時からずっとですが、「感謝の気持ち」は絶対に忘れないようにしています。
ーーTikTokに合わせたスタイルに順応したのですね
そうですね。あとは、17LIVEの時より、自分の枠のリスナーさんだけでなく、「いかに新規のリスナーさんを取り込むか」を常に考えながら配信しています。だから疲れます(笑)。
Q6.”ライバー×アーティスト”として活躍し続けるために大事にしていることや努力していることはありますか?
感謝の気持ちを忘れないこと。それと、常に「第一線」を走りたいという想いです。音楽ライバーとしては、私が一番に「高画質配信」を取り入れました。成績を収めさせていただいているからこそ、機材などにお金をかけて、より良い配信を届けられる。
配信では、歌だけでなく、ヘアメイクや衣装も毎回変えて、目で見て楽しんでもらえるように工夫しています。自分より歌が上手い人はいくらでもいるので、歌以外の部分でも自分らしさを表現できたらなと。マネージャーが常に提案してくれるんです。
ーーマネージャーさんがアイデアを出してくださるんですね
というか、もう全てやってくれます(笑)。私が決めるより、マネージャーの「かにちゃん」が決めてくれることは絶対間違いない、と絶大な信頼を置いているので。もちろん、ぶつかることもありますよ。「画面の前に立ってやってみてよ!」なんて、イライラをぶつけちゃう時もあります(笑)。でも、本当にTikTokに来てからは、お世話になりっぱなしです。
ーー 一回一回の配信をこだわり抜いているんですね
はい。高画質配信はPCを使うのですが、私には難しくて、マネージャーがいないとできません。イベントで長時間配信する時も、ずっとPCの前につきっきり。本当に、二人三脚でやっています。
Q7.ライブ配信活動・アーティスト活動それぞれの目標や夢を教えてください
【ライブ配信活動の目標】
「音楽と言えば、ぶたまんちゃん」。誰に聞いてもそう言ってもらえるようになりたいです。女性の歌枠で、今すば抜けてトップはいないと感じています。男性では「神」さんがトップだと思っているので、女性の歌枠と言えば「ぶたまん」と、誰もが認める存在になりたい。それが、配信での目標です。
【アーティスト活動の目標】
今、TikTokでは「投稿がバズって、テレビに出演する」というのが一般的な流れだと思います。でも、「ライブ配信」をきっかけに、外のメディアに出ていくアーティストは、まだいません。私は、そこを目指したい。
ライブ配信をベースに、上に上がっていきたいんです。だから、ライバーとしての知名度を上げることも、投稿を頑張ることも、全てが繋がっています。「ライブ配信のぶたまんってすごいよね」と、ライバーさんだけでなく、ライブ配信を知らない外の人からも言われるようになって、いつか武道館でライブができるようになりたいです。
目指しているのは、最近のアーティスト像とは少し違う、「平成の歌姫」のようなスタイル。浜崎あゆみさんや、安室奈美恵さんのような、キラキラしたステージ衣装で、懐かしいけど新しい、そんな存在になれたら嬉しいです。
Q8.ライバーがアーティスト活動をするメリット、アーティストがライブ配信活動をするメリットはどのような点にあると思いますか?
【アーティストがライブ配信をするメリット】
ファンの方との距離感が近くなることですね。ファンにとってコメントを読んでもらえたり、直接話せているような感覚になれたり。
【ライバーがアーティスト活動をするメリット】
TikTokの話になりますが、スワイプしている中で、ライブ配信を知らない人が偶然見つけてくれる。そこからファン層が広がります。ライブ配信業界だけでなく、外の人にもリーチできるのがメリットだと思います。
――TikTokへの移籍のタイミングについて
17LIVEでシンガー部門2連覇を達成してから移籍しようかとも考えたのですが、「それじゃ遅い」と。2023年の超祭を諦め、8月で17LIVEを辞めることを決意しました。強行突破でしたし、永久BANになる覚悟もしていました。(以前まで独占契約制度があったため)
Q9. TikTok LIVEの魅力や、好きなところを教えてください!
アプリの利用者数が、日本だけでなく世界中にいて、とにかく多いこと。見つけてもらえる可能性が、すごく大きいと感じます。
ライブ配信を見たことがない人でも、投稿をスワイプしているとライブ配信が流れてくるので、そこで自分を知ってもらえるチャンスがある。TikTokは何となくインストールしている人も多いですし、ファンを増やすという意味で、その可能性の大きさが一番の魅力だと思っています。
〈ライブタイムズ編集部〉