2023年10月期のテレビドラマ『下剋上球児』でエースピッチャー・犬塚翔を演じ、その後、テレビドラマ『ひだまりが聴こえる』や連続テレビ小説『あんぱん』などで、好青年を演じてきた中沢元紀。
そんな中沢が、2026年7月期に主演を務めたドラマ『幸せになりたいマサムネ君』で、役者としての真骨頂を見せていた。

※本記事は分析・考察を含むコラムです。
同作は、売れない作家・マサムネ(中沢元紀)は、交際10年になる恋人・モモカ(秋田汐梨)との関係が、フラれる直前の“終わり”にあると思い込み、現実から逃避するように、彼は相席居酒屋で出会った女性・〇〇子(齊藤なぎさ)と一夜を共にしてしまう……ところからスタート。
言ってしまえば、中沢が演じたマサムネ君は、典型的なクズ男だ。
付き合って10年の彼女に対する態度もなかなか。10年付き合っているからこそ、一緒にいるのが当たり前で、全くをもって彼女の「結婚したい!」オーラに気づかない(いや、自信のなさから見ないようにしている)。それどころか、距離を置くことになったのをいいことに、まさかのセフレを作るという信じがたいキャラクターだ。
一方、マサムネ君に彼女がいると知らずにアプローチする“〇〇子”(齊藤なぎさ)に対しては「俺のこと好きなんでしょ?」という明らかに好きになられた側の上から目線で接し、最後の最後には「俺、あの子のこと、名前すら知らなかった」という始末。「なんで、こんな人を好きになっちゃうの!?」と一視聴者としては“〇〇子”にまったく共感できないまま見続けてしまった。
実際に、そんな役を中沢自身は「初めて原作と脚本を読んだ時、10年付き合っている恋人がいるのに浮気をするマサムネ君に“クズだなぁ、”と思いました」と率直にコメント。
その一方で「間違った選択をしてしまうマサムネ君の根底にある自信のなさと未熟さ、他人と比べてしまう気持ちには、共感できる部分がありました」と付け加え、マサムネ君の弱さに寄り添いながら役作りをしていたことが伺える。
ちなみに、最初にクズ男と説明はしたが、マサムネ君は決して嫌なやつではない。
10年前に付き合ったモモカにとっては、たしかに好きな人であるし、なんだかんだ掴みどころのない空気感はミステリアスな雰囲気が好きな女性からしたら惹かれるものがある。それにどうしようもなくチャラいとか、いじわるということは決してない。ただ、優しさのベクトルを間違えていて、かつ自信がないだけ。
そのように絶妙な“クズ男”を表現できたのは、これまで誠実に役柄と向き合ってきた中沢だからこその技だと感じる。
特にそれを感じたのは、先述した「俺のこと好きなんでしょ?」という一言を放つシーン。そこでの一言は言葉こそ上から目線ではあるものの、決して自信満々に言ったのではなく、自分が1人としか付き合ったことがないという自信のなさ、そんな1人との“終わり”を感じているがゆえの誰からも好かれていないかもしれないという不安を感じさせる哀愁の漂うものだった。
きっと今回の誠実系俳優から脱却した姿が、今後のキャリアの幅を広げてくれることは、間違いない。果たして、次はどんな役で裏切ってくれるのか。今後の中沢のキャリアに注目だ。
〈ライブタイムズエンタメ編集部 / 文:於ありさ〉※本記事は分析・考察を含むコラムです。