
正直に言えば、このイベントは決して“万人向け”ではない。いや、むしろ逆だ。ラジオを聴いていない人間にとっては、理解することすら難しい“内輪ノリ”の集合体である。
それでも、マユリカのラジオイベント「マユリカのうなげろりん!!presents日本の大学いきましょか~冨島桜でイギギギギ!やる気はあるけどやめときます~」の配信チケット販売枚数が5万4000枚を突破したという。22日まで購入可能で、その実数値はさらに伸びただろう。
この数字は単独芸人による公演・イベントとしては史上最多。お笑い芸人としての金字塔をひとつ打ち立てたとも言え、ひとつのファンダムを構成している。それこそが記録的な販売枚数にもつながっているのではないか。
今回のイベントはコンビのポッドキャスト番組「マユリカのうなげろりん!!」から派生したもので、イベント内では中谷扮するキャラクター・ルナヴェル様の降臨や、中谷自作の朗読劇「桜ヶ丘高校バレー部」の続編、中谷のダッチワイフであるさゆりとお別れするセレモニーなどが執り行われた。
これらはいずれもラジオ内で何度も言及してきた、いわば“名物企画”でリスナーやファンにとってはたまらない。一方で、マユリカはラジオ内のことはラジオ内で収め、逆に仕事のことはラジオで言及しないことを徹底している。きっと彼らなりの美学だろう。
だから、マユリカのことを芸人として認識している人でもルナヴェル様やさゆりの存在を知っている人はそれほど多くないはずで、今回のイベントの企画を初見で完璧に理解することは難しいだろう。
「桜ヶ丘高校バレー部」もさゆりという存在もラジオで繰り返し扱われ、笑われ、育ってきたコンテンツ。中谷の朗読も阪本のリアクションも最高であることも言うまでもないが、背景を理解しているからこそより楽しめるコンテンツとなっている。
マユリカにそのつもりはないだろうが、彼らは狭く深くファンに“刺さる”ことを扱うのを得意にしていると思う。とりわけラジオは地上波では話せないような性のネタも多く、今回のイベントでも当たり前のように冒頭から話題に飛び出した。
イベントでは笑い声と同じくらい悲鳴が飛び交ったが、それはファンがマユリカを拒否しているわけではない。彼らの楽しみ方のひとつがその“怖いもの見たさ”であり、楽しみ方がわかる人たちが残った結果が今回の数値につながったのだ。
理解できる者だけが笑える。知っている者だけが熱狂できる。その設計がファンの帰属意識を強く刺激し、「自分はこの世界の住人である」という感覚を生み出す。結果として、そのコミュニティは極めて強固なものになる。
濃度が極限まで高まり、ラジオイベントは大成功に終わった。いわば最高の“内輪ノリ”はヘビーリスナーからすれば確実に楽しめる内容で、満足度は他の追随を許さない。またイベントが開催されれば、喜んでお金を支払いたいとさえ思った。
そうした濃いファン層が5万人以上いるということがマユリカの強みであり、芸人界でも唯一無二の存在たらしめている。
〈ライブタイムズ編集部 / 文:まっつ〉※本記事は分析・考察を含むコラムです。