「乗り越える」をテーマに掲げる日本最大級のビジネスカンファレンス「Climbers X LIVE 2026」が、2026年6月9日・10日の2日間、東京ビッグサイトで開催された。Sansanの名刺アプリ「Eight」が、テレビ東京、幻冬舎「GOETHE」と共同で手がけるイベントだ。各界のトップランナーが、それぞれの現場で壁を乗り越えてきた経験を語り、不確実な時代を進むビジネスパーソンに新たな視点と、一歩踏み出す勇気を届ける。今回は新イベント「BEYOND FORUM 2026」も同時開催され、多数の企業が出展する会場には、業界も職種もさまざまなビジネスパーソンが詰めかけた。

コシノ ジュンコ、岡崎慎司、郷ひろみ、又吉直樹といった多彩な顔ぶれが登壇するなか、6月10日のステージに立ったのが、女優・橋本環奈である。「輝くのは天賦の才か、努力の証か——時代のミューズが初めて語る裏側」。公式がそう掲げたとおり、映画やドラマ、舞台、そして紅白歌合戦の司会と、第一線で大役を担い続けてきた橋本は、「壁を乗り越える」というイベントのテーマを、まさに体現する一人だ。セッションは「大役に応える力」「本番力」「信頼」の三つのテーマに沿って進行。進行は、テレビ東京アナウンサーの古旗笑佳が務めた。
純白のワンピースに透明感のあるメイク。橋本は華々しく登場すると、会場に向けて深く一礼し、講演をスタートさせた。

最初のテーマは「大役に応える力」。紅白の司会や朝ドラのヒロインなど、大きな役割に向かっていくときに大事にしていることを問われると、橋本はまず「準備」の話を切り出した。どれだけ準備をしても足りないと思う、と率直に明かす。役者の仕事には決まった正解がなく、同じ芝居でも相手のセリフの受け取り方ひとつで結果が変わる。だからこそ、セリフを覚えるだけでなく、自分が演じる人物がどんな性格でどう動くのか、そのバックボーンまで考え込むのだという。
それでも「十分だ」と感じることはない。橋本は「大役が絶対自分にはできるっていう風に自信を持ってるわけではなく、やっていくうちにこれだったらできるかも、あれだったらできるかもっていう、ほんとに1つ1つの積み重ねだと思うんですよ」と、自身の感覚を言葉にした。中学3年生のときに1枚の写真で注目を集めて以降、数々の作品で多くの人と仕事を重ねてきたが、完成した作品を見て悔いが残ることも多いという。失敗も織り込んだ上で、丁寧に積み重ねていく。その姿勢を繰り返し語った。

続くテーマは「本番力」。準備をしても本番では予期せぬ対応を迫られるのではないかと問われ、橋本が例に挙げたのが紅白歌合戦の司会だった。4時間半におよぶ生放送は、リハーサルどおりには進まないことも多い。3年間司会を務めた橋本は、「前半に時間を使いすぎると、後半のアーティストさんたちがお話できなかったりとかするじゃないですか。なんかそれはすごく平等ではないなと思った」と振り返り、誰もが平等に時間を持てるよう、全体の配分に気を配ってきたと語った。本番中も、出番のたびに次の展開を見据え、セットチェンジが長引きそうなときには間をつなぐ一言を用意しておくなど、何が起きても対応できる状態をつくっておくことを心がけているという。
本番に向けて、ビジネスの場でも生かせる準備のヒントを尋ねられると、橋本は「相手の立場に立って想像する」という方法を挙げた。プレゼンであれば、自分がプレゼンを受ける側だったら何に興味を持つか、どんな質問をしたくなるかを考え、その答えを準備しておくのだという。芝居でも、相手役がどんな気持ちになり、どう動くかを想像して備える。想像どおりにいかないことの方が多いというが、それでも準備しておくことで「とっさにあたふたしなくなる」。右に左に飛んでくるボールを拾える感覚がある、と表現した。
「相手の立場になってみないと、自分の主観だとどうしても客観的に捉えられなくて物事がうまく進まないことが多い」。橋本はそう語り、想像力こそが芝居の核だと続けた。自分の中にない感情は出せない。だからこそ、経験したことのないものにも挑戦していきたいと話し、その積み重ねが引き出しになっていくのだと明かした。
新しい挑戦に対して楽しさが勝つのか、不安があるのかを問われたとき、橋本はこの日もっとも印象的な言葉を口にした。「私はもう何事にも不安を感じません。プレッシャー感じませんってはっきり言ってて、なんかそれを言葉に出すことでそうなっていく気がしてて」。人生は楽しいし、自分は本当に強いと思っている。それを前に出すことで、実際にそうなってきている気がするのだという。
言葉にすることで現実になっていく。橋本はそれを「言霊」と呼んだ。取材などで自分のことを語る機会が多く、言葉にすることで考えが整理される。その積み重ねが、感情の引き出しとしても役者の仕事に直結しているという。楽しかった出来事だけでなく、さまざまな人生経験が芝居に生きると語り、「ないところから感情は生まれない」と自身の信条を明かした。

三つ目のテーマは「信頼」。「また一緒に仕事したい」と思ってもらうために大事にしていることを問われると、橋本は信頼を「築くのは難しく、一瞬でなくなるもの」だと表現した。だからこそ積み重ねだと考え、今も「まだ信頼を勝ち取れていない」という気持ちで全員に接しているという。
一つの作品には60〜100人近いスタッフが関わる。橋本は、その一人ひとりの名前を覚え、コミュニケーションを取ることを大切にしている。挨拶という当たり前のことを徹底し、主演を務めるときには現場を明るくしようと、軽いジョークを言ったり、差し入れをしたりする。「真剣に向き合ってたら、やっぱり答えてくれるんですよ」と語り、そうして距離が縮まると、まわりのスタッフも「橋本環奈」としてではなく、一つの作品を一緒につくる「仲間」として接してくれるのだという。
その根っこにあるのは、アイドル時代に身につけた礼儀だという。部活動やアルバイトの経験はないものの、上下関係の厳しいアイドルの世界で、社長やマネージャー、スタッフといった大人たちに囲まれて過ごすなか、挨拶をきちんとすることは皆が当たり前に思っていた——そうして自然に身についたものだ、と振り返った。
人との距離感については「何も考えていない」ときっぱり。近ければ近いほどいい、と笑う。撮影のギリギリまでカメラマンとふざけていることもあるという橋本だが、それは気持ちの切り替えが得意だからこそ。本番では力が抜けている方がいい、気負いすぎると動けなくなる、と語った。

セッションの後半では、来場者から寄せられた質問にも答えた。
そして最後に、壁を乗り越えようとしているビジネスパーソンへ、橋本は言葉を贈った。自分の言葉や言霊を信じ、自分はできる、自分は強いと大きく発言するようにしている。それでも後悔や失敗はたくさんあるけれど、真剣に向き合っていることが伝われば仕事は結びついていく。最終的には、どれだけ丁寧に、誠心誠意仕事に向き合っているかだと思う——そう語った橋本は、続けてこう締めくくった。
「とにかく仕事をプライベートで楽しむっていうことがすごく大切なのかなという風に、楽しみながら丁寧に向き合っていってます。皆さんもいろんな職業の方がいらっしゃると思うんですけど、これからも私も一緒に頑張っていきたいと思うので。一緒に頑張っていきましょう」
会場は大きな拍手に包まれ、セッションは幕を閉じた。
不安を口にしない強さと、誰よりも丁寧に積み重ねる地道さ。その両輪で大役を担い続ける橋本環奈の言葉は、「乗り越える」というこのイベントのテーマそのままに、業界を問わず、今まさに壁を登ろうとする一人ひとりの背中を押すものとなった。

【Climbers X LIVE 2026 開催概要】
名称:Climbers X LIVE 2026(クライマーズ エックス ライブ)
テーマ:乗り越える
主催:Sansan株式会社 名刺アプリ「Eight」、株式会社テレビ東京、GOETHE(株式会社幻冬舎)
会期:2026年6月9日(火)〜6月10日(水)
会場:東京ビッグサイト 南1・2ホール(東京都江東区有明3-11-1)
※新イベント「BEYOND FORUM 2026」を同時開催
写真提供:Sansan株式会社
〈ライブタイムズ編集部〉