
お笑い界は確かに新たな方向へと歩みを進めた。SNS上、ネット上での反響を見れば、『ツッコミ芸人No.1決定戦 ツッコミスター』(フジテレビ系)は間違いなく成功に終わったと言っていい。
霜降り明星・粗品がMCを務める、新たな競技型の番組『ツッコミスター』。出場者の中にはM-1グランプリ王者や決勝常連メンバーもいたが、21時からのゴールデン帯に出演する芸人としては無名の者も多かった。それでも、若手芸人たちは新たな「面白い」を様々な角度から示し、しっかりと爪痕を残した。
数字や色といったお題にツッコむというフォーマットの『ツッコミスター』。これは粗品がYouTubeで行っていた前身企画『ツッコミマン』を踏襲するもので、芸人の技量に全ベットするスタイルは変わらない。
早押しで答え、ポイントを競い合うというのは同局の人気番組『IPPONグランプリ』と同様だが、ツッコミで笑いを起こすというところに決定的な違いがある。そもそも数字や色といったものはボケていないし、それ単体では何の面白みもない。それを言葉によって新たな見方を提供することで、初めてお笑いとして成立させる。提示された無機質な情報に対し、「0→1」を彼らは瞬時に行い続けていたのだ。
数字の羅列や、何でもない色が言葉によって意味を持ち出す瞬間、突如笑いへと変わる。従来のボケ→ツッコミから一気に飛躍した挑戦は類を見ず、あまりに革新的だった。この番組を見てお笑いを志したり、ツッコミに憧れを抱いた者もいるのではないか。
もちろん、笑うのに知識を要すような――「(「991」という数字に対し)英語を作った人のTOEICの点数か」――たとえツッコミもあった。すべてのツッコミの文脈を理解できた人はなかなかいないだろう。しかし、それこそが新しいお笑いに挑戦しているという証左であり、主催者である粗品の望みでもあった。1つ目に思いつくような“ベタ”を完璧に排したツッコミの数々が飛び交う番組は新鮮で、文字通り新時代の到来を感じさせた。
さらに言えば、『ツッコミスター』をきっかけに新たな潮流が生まれる可能性すらある。
優勝したママタルトの檜原洋平、準優勝のゼロカラン・ワキユウタはいずれも“長文ツッコミ”の使い手であった。状況をしっかりと説明しきる長尺でのツッコミはとかく賞レースでは日の目を見ず、実際ママタルトはM-1グランプリ決勝では2年連続下位に終わっていた(決勝に行くこと自体が快挙なのだが)。
いわば審査員受けしづらいやり方だったわけだが、それを粗品は「面白い」と評価したである。『ツッコミスター』のフォーマット自体が彼ら向けであることは間違いないが、それでも今後の賞レースへの影響も決して否定することはできない。
ツッコミ界に新たな風を吹かせ、お笑いは確実に前進した。この前進がやがて新たなスタンダードとなるのか、分岐点となるのか――いずれにせよお笑いは次のフェーズへと足を踏み入れたのかもしれない。
〈ライブタイムズ編集部 / 文:まっつ〉※本記事は分析・考察を含むコラムです。